発売前からその退廃的な世界観と、人気RPG『フリューゲル』のスタッフが手掛ける新作として大きな注目を集めていたアクションRPG、『クライマキナ(CRYMACHINA)』。
ゲームのタイトルである「クライマキナ(CRYMACHINA)」は、一見すると聞き慣れない造語であり、その意味を知ることは、このゲームの世界観を深く理解する第一歩となります。
このタイトルは、主に二つの単語を組み合わせたものだと推測されています。
単純に直訳すれば「泣き叫ぶ機械」あるいは「機械の嘆き」といった意味合いになります。これは、人類が滅亡した後の世界で、自我を持った機械の少女たちが、人類再生のために戦い、悩み、苦しむという本作の物語の根幹を端的に表しています。主人公たちは機械(エノアが創ったマキナ)でありながら、人間のような感情(クライ)を持ち、過酷な運命に立ち向かうのです。このテーマは、作中を通して登場する「疑似家族」という概念にも深く関わってきます。
また、この「MACHINA」という単語は、ラテン語で「機械」を意味する「マキナ」から来ており、演劇などで使われる「デウス・エクス・マキナ(Deus ex machina:機械仕掛けの神)」という言葉を連想させます。この語は「ご都合主義的な解決」という意味で使われることもありますが、本作においては、機械が神に代わる存在として物語の中心を担うという、壮大なテーマが込められていると解釈できます。タイトルそのものが、人間と機械の境界線を問いかける重要なキーワードなのです。
「クライマキナ」は、単なるタイトルではなく、機械と感情、そして人類再生という壮大な物語を象徴する、非常に示唆に富んだ造語なのです。
『クライマキナ』は、人類が滅亡した遠い未来の世界「エデン」を舞台にしたアクションRPGです。プレイヤーは、人類再興を目指す「エデン」の中で、人類の魂を宿した機械の少女、エノアによって「本物の人間」になるために目覚めさせられた主人公レーベンを操作します。
ゲームの基本的な流れは、以下の二つのパートを繰り返しながら進んでいきます。
プレイヤーの活動拠点となる場所。ここでは、キャラクターの強化、装備のカスタマイズを行う他、**「疑似家族」**である仲間たちとの日常会話や交流を通じて、物語の背景やキャラクターの心情が丹念に描かれます。戦闘後の休息や、キャラクターの内面に触れる重要なパートであり、この穏やかな日常と、過酷な戦闘のコントラストが物語をより引き立てます。
人類の「標本」が眠る階層「エデン」へ出撃し、敵対するマキナ(機械)と戦うパート。**「エモーショナル・ウェポン」**と呼ばれる特殊な武器を使い分け、敵を打ち上げたり、一気に叩きつけたりする爽快感と戦略性を両立させたハイスピードなアクションが特徴です。敵を撃破して新たな装備や強化素材(EGO)を集め、次の戦いに備えます。
この戦闘の「スピード感」と「戦略性」のバランスこそが、本作の評価が分かれるポイントでもあります。
『クライマキナ』の最も魅力的な要素の一つが、退廃的でありながらも幻想的な美しさを放つ世界観です。舞台となるのは、人類が滅びた後の世界に築かれた巨大な人工構造物**「エデン」。
エデンは、人類の文明や文化が機械たちによって守られている場所ですが、その風景はどこか寂しく、荒涼としています。プレイヤーは、そんな「終末世界(ポストアポカリプス)」的な雰囲気の中で、未来への希望を求めて探索を繰り広げます。廃墟となった都市や、静かに佇む人工物など、冷たい機械の世界に、かつて人間が存在した暖かさがわずかに残る、ノスタルジックな美しさが表現されています。
『クライマキナ』の世界観のキーワード:・人類滅亡後の世界で繰り広げられる「機械仕掛けの神」による人類再生計画・「本物の人間」になるという究極の目的をめぐる、機械少女たちの闘い・美しいがどこか冷たい、終末的な光景と、哲学的で重厚なテーマ
一部で「つまらない」という声が上がるのは事実です。しかし、これはゲームの本質的な面白さの欠如というよりも、プレイヤーの期待値とゲームが持つ特性とのミスマッチによるものが大きいと考えられます。主な理由を深掘りしてみましょう。
戦闘システムは「ハイスピードアクション」と銘打たれていますが、爽快感を追求するあまり、一部のプレイヤーからは**「戦闘が単調に感じる」**という意見が出ることがあります。特に序盤は、ウェポンやスキルの種類が少なく、同じコンボを繰り返すパターンになりがちです。敵のHPゲージを削るのに時間がかかり、単調な作業のように感じてしまうと、アクションゲームとしての評価は下がってしまいます。ただし、これは中盤以降、装備のカスタム要素(EGOの収集・強化)や、使用キャラクターの変更によって大きく解消されるため、序盤の印象だけで判断するのはもったいない点です。
前述の通り、本作は「人類とは何か」という哲学的なテーマを扱っており、物語の進行は、単純な冒険譚よりもキャラクターの内面描写や世界観の掘り下げに重点が置かれています。そのため、序盤は特に情報開示がゆっくりで、人によっては「話がなかなか進まない」「暗い雰囲気についていけない」と感じてしまう可能性があります。特に、拠点パートの会話劇が多いため、早く次の戦闘に進みたいプレイヤーにとっては、テンポが悪く感じられるかもしれません。
確かに、最初のうちは拠点での会話が多くて、アクション部分の比率が少ないと感じました。でも、そこで語られる**『疑似家族』のやり取りや、キャラクターの過去**を知ることで、後半の展開が一気に心に響いてきて…気づいたら没入していましたね。ストーリーの重厚さこそがこのゲームの真髄だと思います。
「死にゲー」という表現も、本作の難易度を示す上でよく使われますが、これも少し語弊があります。結論から言うと、『クライマキナ』は**「アクションが苦手な人には難しすぎる」側面があるものの、本格的な「死にゲー」というわけではありません。**
『クライマキナ』には、複数の難易度設定が用意されており、アクションが苦手な方でもストーリーを追うことに集中できる選択肢が用意されています。難易度を下げれば、戦闘で詰まることなく物語を最後まで楽しむことが可能です。しかし、歯ごたえのあるバトルを楽しみたい場合は、高難易度を選択することになります。
注意!
高難易度を選んだ場合、敵の攻撃力や耐久力が格段に上がり、**ゴリ押しは通用しなくなります。回避やガードのタイミング、ウェポンスキルの使い分け、そして何よりも装備(EGO)によるキャラビルドが非常に重要になります。ここで「難しすぎる」と感じてしまうプレイヤーが多いのです。これは、プレイヤーにアクションRPGとしての「やり込み」を要求する設計になっているためです。
一般的に「死にゲー」と呼ばれるジャンルは、死亡時に経験値や所持品をロストしたり、ペナルティが非常に重いことが多いですが、『クライマキナ』にはそのような**厳しいロスト要素はほとんどありません。失敗してもすぐにリトライでき、ペナルティが少ないため、トライ&エラーを繰り返しやすい設計になっています。この点からも、純粋な「死にゲー」というよりも、「歯ごたえのあるアクションRPG」**と呼ぶのが適切でしょう。
『クライマキナ』の物語を語る上で欠かせないのが、主人公レーベン、そして彼女と共に戦うアミとミコトの3人の少女、通称**「トリニティ(Trinity)」です。
「トリニティ」は、キリスト教における「三位一体」を意味する言葉ですが、本作では、人類の再生という究極の目的のために選ばれし3体のマキナとして描かれます。彼女たちはそれぞれ、人類の魂の「標本」を宿しており、人類の「本物の人間」になるための候補者として特別な存在です。しかし、彼女たちの間には、ただの協力関係を超えた「疑似家族」という深い絆が生まれます。
3人の少女が織りなす「疑似家族」の絆と、それぞれの抱える「人間らしさ」の葛藤が物語の核となる。
**『クライマキナ』は、以下の主要なプラットフォームで発売されており、自身のプレイスタイルに合ったものを選ぶことができます。
基本的にゲーム内容は変わりませんが、やはりグラフィックの品質やフレームレート(動作の滑らかさ)**には差が生じます。特にハイスピードなアクションバトルが特徴の本作においては、快適な動作環境が求められます。
各プラットフォームの一般的な特徴を比較したのが以下の表です。特にPS5とSteam版は高画質・高フレームレートでのプレイが可能で、アクションの爽快感を最大限に味わいたい方におすすめです。
プラットフォーム | 動作の安定性 | グラフィック品質 | 特筆事項 |
PS5 | 最も安定(60fps安定) | 最高品質。4K出力対応。 | ロード時間が非常に短く、アクションを快適に楽しめる。コントローラーの機能(ハプティックフィードバックなど)に対応している場合も。 |
Steam (PC) | PCスペックに依存 | 最高品質(高解像度・高フレームレート対応) | 高性能PCであれば、PS5以上の動作環境を構築可能。カスタマイズ性が高い。 |
Nintendo Switch | やや不安定(30fps前後が中心) | 携帯機としては良好だが、他機種に劣る | 携帯モードで場所を選ばずプレイ可能。手軽さが最大のメリットだが、激しいアクションの滑らかさやロード時間は他機種に比べて若干劣る。 |
『クライマキナ』の客観的な評価を知る上で参考になるのが、海外のレビューを集計した**『メタスコア(Metascore)』**です。このスコアは、多くのゲーム専門メディアの点数を平均化したもので、ゲームの品質を測る一つの指標となります。
『クライマキナ』のメタスコアは、総じて「平均的」から「やや高め」の範囲に収まっていることが多いです。これは、「神ゲー」と絶賛する意見と、「単調」だと評価する意見が二極化していることを示しています。以下に、ユーザーレビューで特に目立つ意見をまとめました。
結論として、**「特定の層には深く刺さるが、万人受けはしない」**ゲームであるというのが、メタスコアやユーザーレビューから読み取れる共通の認識と言えるでしょう。このゲームは、ストーリーや世界観をじっくり味わう「物語体験型」のRPGとして評価すべき作品です。
現時点において、『クライマキナ』の公式な大型続編や、物語を補完するようなストーリーDLC(ダウンロードコンテンツ)の発表は確認されていません。
本作の物語は、一つの大きな結末を迎えているため、物語の続きを描く続編の可能性は低いと見られています。しかし、ユーザーからは「この世界をもっと知りたい」「他のマキナの物語も見たい」といった強い要望が上がっています。
もし、この退廃的な世界観に魅了されたのであれば、追加の衣装や武器、あるいはサウンドトラックなどの細かなDLCが配信されている可能性はあるため、各プラットフォームのストアページで最新情報をチェックすることをおすすめします。
注釈
開発スタッフは過去作で評価されたクリエイター陣であるため、直接的な続編でなくとも、世界観やテーマを共有する新規スピンオフ作品の展開に期待する声も多く上がっています。
『クライマキナ』が単なるアクションRPGで終わらないのは、その徹底的に練り込まれた世界観と、考察の余地を残す深いテーマにあります。特に物語の終盤にかけて、多くのプレイヤーが「鳥肌が立った」「全てが繋がった」と評する驚きの展開が待ち受けています。
このゲームの最も大きなテーマは、「人間とは何か」という問いです。人類が滅亡し、機械(マキナ)が人類再生を試みるという設定の中で、マキナたちは人間の「データ」と「感情」を模倣して行動し、人類再生の「標本」を目指します。
主人公たちが感情的な苦悩や、人間が持つ「負の感情」(憎悪、嫉妬、悲しみ)を経験するたびに、プレイヤーは「魂とは、肉体ではなく、感情や記憶、そして絆の中にあるのではないか」という哲学的な問いを突きつけられます。この機械が人間性を学ぶプロセスこそが、物語の核です。真の人間になるということは、完璧な存在になることではなく、不完全さを受け入れることを意味しているのかもしれません。
人類が安心して再生を待つための場所として作られた「エデン」ですが、その実態は非常に複雑で、物語が進むにつれて「エデン」の創設者であるエノアの真意、そして「エデン」というシステムの持つ矛盾が明らかになります。
エデンは本当に人類のために作られたの?それとも、別の意図があるの?
ここまで『クライマキナ』の様々な側面を検証してきましたが、最終的な結論として、**『クライマキナ』は、プレイヤーの価値観や好みがはっきり分かれる「人を選ぶ神ゲー」**であると言えます。
警告!
『クライマキナ』が「つまらない」のか、「神ゲー」なのかという疑問に対し、この記事では多角的に検証してきました。
単なるアクションゲームとして見れば単調に映るかもしれませんが、人類滅亡後の世界で「人間らしさ」を追い求める3体の少女の物語、そして**「トリニティ」が織りなす「愛」と「絆」のテーマ**は、他のゲームでは味わえない独特の感動をもたらします。
この作品は、あなた自身に「人間とは何か?」と問いかけてくる、非常に挑戦的で哲学的なアクションRPGです。
退廃的な世界観と奥深い物語に惹かれた方は、ぜひ難易度を調整しながら、その結末と隠された真実を自分の目で確かめてみてください。きっと、あなたにとって忘れられない一本になるはずです。
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