スクウェア・エニックスが手掛けるRPG「FANTASIAN Neo Dimension」(以下、ファンタジアン)は、2021年にApple Arcadeで初登場し、2024年にコンシューマ向けに進化した作品だ。
ファイナルファンタジー(FF)シリーズの生みの親である坂口博信氏と、名作曲家・植松伸夫氏のタッグによる本作は、発表当初から大きな注目を集めた。
しかし、プレイヤーの間では「面白い」「つまらない」と評価が二極化しているのも事実。
この記事では、ファンタジアンが本当に「つまらない」のか、その魅力と課題を多角的に分析し掘り下げる。
ゲームの特徴、ストーリー、バトルシステム、グラフィック、音楽、ユーザーの声、そして改善点まで、すべてを網羅的に検証していく。
ファンタジアンは、ミストウォーカー開発、スクウェア・エニックスがパブリッシングを担当するRPGだ。
元々はApple Arcade向けに前後編構成でリリースされたが、2024年12月5日にNintendo Switch、PlayStation 5、PlayStation 4、Xbox Series X|S、PC(Steam)向けに「Neo Dimension」として移植された。
このバージョンではキャラクターボイスや難易度設定の追加、4K画質対応など、コンシューマ向けに最適化された要素が盛り込まれている。
主人公レオアは記憶を失った青年で、次元を超える「ワープマシン」を頼りに冒険を始める。
物語は、人の感情と命を奪う「死械球」が世界を脅かす中、レオアが仲間たちと共にその謎を解き明かし、自身の記憶を取り戻す旅を描く。
王道RPGらしい壮大なスケールと、FFシリーズを彷彿とさせるテーマが特徴だ。
ストーリーは60~70時間でクリア可能だが、やり込み要素を含めると80~100時間に及ぶボリュームを持つ。
ファンタジアンは、坂口氏が2018年にFF6をリプレイしたことをきっかけに生まれた。
「古き良きJRPGの魅力」を現代に蘇らせたいという思いが込められており、坂口氏自身が「最後のプロジェクトになるかもしれない」と語るほどの意気込みで制作された。
手作りのジオラマを150以上使用したフィールドや、植松伸夫氏の60曲に及ぶサウンドトラックなど、細部までこだわりが感じられる作品だ。
ファンタジアンが一部のプレイヤーから絶賛される理由は、その独自性とJRPGの伝統を融合させた点にある。
ここでは、ゲームの強みを具体的に挙げていく。
ファンタジアンの最大の特徴は、実物のジオラマを3Dスキャンして構築したフィールドだ。
150以上のジオラマは、特撮業界のベテランや鳥山明氏の作品に影響を受けた職人たちによって作られた。
これにより、CGでは再現しきれない温かみと手作り感が画面に溢れる。
プレイヤーは、街やダンジョンを探索するだけで「ミニチュアの世界を冒険している」ような感覚を味わえる。
特に4K対応のコンシューマ版では、細部の精巧さが際立ち、木々の質感やガラクタのディテールまで楽しめる。
例えば、ゲーム内の船「ウズラ号」の船長室は、実際のジオラマ模型が東京ゲームショウ2024で展示されるほど話題に。
プレイヤーからは「見ているだけで癒される」「美術館を歩いているみたい」との声が上がる一方、ジオラマの美しさがゲームの核となる探索のモチベーションを高めている。
ファンタジアンのバトルは、コマンド式ターン制に「エイミング」システムを組み合わせたもの。
攻撃や魔法の軌道を操作し、複数の敵を同時に攻撃できるこの仕組みは、単純な殴り合いでは終わらない戦略性を生む。
特に後半のボス戦では、ギミックを理解し、適切なスキルや装備を選ぶ必要があり、FF10のような「タイミングを見極める」戦闘の楽しさが再現されている。
Neo Dimension版では、ノーマルとハードの難易度選択が追加され、コマンドバトルに不慣れなプレイヤーでもストーリーを楽しめるようになった。
また、「ディメンジョンシステム」により、雑魚敵を一時的にストックしてまとめて戦えるため、探索のテンポを損なわず、戦闘回数を減らせる点も好評だ。
このシステムは、レベルアップや回復アイテムの節約にも繋がり、プレイヤーの自由度を高めている。
植松伸夫氏によるサウンドトラックは、ファンタジアンの世界観を強力に支える。
60曲以上が収録され、戦闘曲「戦いの使命」や「最終決戦」など、FFシリーズを彷彿とさせる壮大なメロディが随所に登場。
特に、ディメンジョン戦闘専用のBGM「ディメンジョン」は、異次元での戦いを強調し、プレイヤーの没入感を高める。
一方で、終盤の「死械の果て」ではボーカル入りの曲が賛否両論を呼んだが、全体として「魂に響く」と評価される音楽は、ゲームの情感を大きく引き立てている。
ファンタジアンは、FFやドラゴンクエストのような王道RPGの系譜を継ぐ。
記憶を失った主人公、仲間との絆、世界を救う使命といったテーマは、どこか懐かしく、RPGファンにとって「帰ってきた」感覚を与える。
ストーリーはサウンドノベル風の「記憶の断片」でキャラクターの背景を掘り下げ、置いてけぼりにしない設計も好評。
プレイ時間60~70時間というボリュームは、現代のRPGとしては長めだが、クエストや「虚無の世界」といったやり込み要素が充実しており、腰を据えて楽しみたいプレイヤーに最適だ。
一方で、ファンタジアンには「つまらない」「期待外れ」と感じるプレイヤーも少なくない。
以下では、批判の主なポイントを分析し、その背景を探る。
ファンタジアンのフィールド移動は、固定カメラとジオラマベースの2D平面移動を採用している。
これが原因で、操作性が悪いとの声が目立つ。
具体的には、フィールドの切り替え時にカメラアングルが頻繁に変わり、移動方向が直感に反する場合がある。
特に、左スティックをニュートラルに戻さずに入力し続けると、意図しない方向に進むことがあり、ストレスを感じるプレイヤーもいる。
Apple Arcade版ではタップ移動やバーチャルパッドの不在が問題だったが、コンシューマ版ではアナタスティックに対応したものの、カメラの動きが「過剰」と感じられるケースは残る。
一部のプレイヤーは「0.1秒のニュートラル操作で解決する」と擁護するが、慣れないユーザーにとっては「画面酔いのリスク」にも繋がる。
特に、PS時代のバイオハザードのような固定カメラに慣れていない若い世代には、この仕様がハードルとなる可能性がある。
ファンタジアンのバトルは後半になるほど難易度が上昇し、ボス戦のギミックが「初見殺し」と感じられることが多い。
例えば、ボスが発動する「岩が舞う」ギミックは、タイミングを測らないと攻撃が通らず、プレイヤーに試行錯誤を強いる。
また、100%ヒットするデバフや、テンションゲージ(奥義用)が戦闘ごとにリセットされる仕様は、戦略の幅を狭め、ストレスを増大させるとの批判がある。
プレイヤーからは「イージーモードが欲しい」「爽快感が足りない」といった声が上がっている。
Neo Dimension版でノーマル難易度が追加されたものの、ハードモードを選択する熟練プレイヤーでも「理不尽」と感じる場面がある。
特に、レベル上げが効率的でない設計や、ロード時間の長さが戦闘のテンポを損なう点も指摘されている。
ストーリーは王道ゆえに「先が読める」「既視感がある」との評価も。
後半では、複雑な言葉や長編の説明が続き、「3行でまとめられる内容を延々と語る」と感じるプレイヤーもいる。
FF6やニーアのような重厚なテーマを意識した作りは、坂口氏のファンには魅力的だが、現代のテンポの速い物語を求めるプレイヤーには「古臭い」と映る場合がある。
特に、キャラクターの掘り下げがサウンドノベル形式に依存しているため、ダイナミックな演出を期待するプレイヤーには物足りないかもしれない。
コンシューマ版では、マップ切り替えやバトル開始時のロード時間が長いとの不満が散見される。
特にNintendo Switch版では、毎回の戦闘でロードが発生し、「もっさり感」が際立つ。
ディメンジョンシステムで戦闘回数を減らせるものの、ボス戦やイベント戦では避けられないロードがテンポを損なう。
プレイヤーからは「ゲームスピードが遅い」「戦略性より不便さが目立つ」との声もあり、現代の高速なゲームに慣れたユーザーにはマイナスポイントとなる。
ファンタジアンの評価は、プレイヤーの期待値やゲーム体験の好みに大きく左右される。
ここでは、肯定的・否定的な意見をバランスよく紹介する。
プレイヤーの声からは、ファンタジアンが「古き良きRPG」を愛する層には刺さる一方、現代的な快適さを求める層には不満が残る傾向が見える。
Xでの投稿でも「ボス戦のギミックが不愉快」「1時間で疲れる」といった声がある一方、「要所を越える達成感がすごい」との意見も存在する。
ファンタジアンの評価は、プレイヤーの好みや期待に大きく依存する。
以下に、向いている人と向いていない人の特徴をまとめる。
ファンタジアンは多くの魅力を持つが、現代のRPGとしてさらに評価されるための改善点も存在する。
以下に、具体的な提案を挙げる。
ファンタジアンが「つまらない」かどうかは、プレイヤーの好みと期待値に大きく左右される。
ジオラマフィールドの美しさ、戦略性の高いバトル、植松伸夫氏の音楽、王道RPGの安心感は、JRPGの伝統を愛するプレイヤーにとって圧倒的な魅力だ。
特に、FFシリーズのファンや、坂口博信氏の集大成を体験したい人には、60~100時間の冒険が感動的な旅となるだろう。
一方で、操作性の悪さ、ロード時間の長さ、後半の難易度の高さ、ストーリーの冗長さは、現代の快適さやテンポを求めるプレイヤーにとって明確な欠点となる。
筆者個人としては、ファンタジアンは「つまらない」と一刀両断するには惜しい作品だと感じる。
確かに課題はあるが、ジオラマの美しさやバトルの奥深さは、他では味わえない独自の体験を提供する。
もしあなたが「古き良きRPG」に心を惹かれるなら、ファンタジアンはその期待に応える可能性が高い。
ただし、カジュアルなゲーム体験や革新的なストーリーを求めるなら、他のタイトルを優先してもいいかもしれない。
最終的に、ファンタジアンは「人を選ぶ」ゲームだ。
しかし、その「選ばれた人」にとっては、忘れられない冒険となるだろう。
あなたは、ジオラマの世界を旅する準備ができているか? その答えが「はい」なら、ファンタジアンは決して「つまらない」ゲームではないはずだ。