「消印(けしいん)」という言葉は聞いたことがあっても、その具体的な役割や重要性について深く考えたことはありますか?実は、切手の消印には、私たちが想像する以上に多くの情報と意味が込められているんです。
消印とは、郵便物が発送されたことを証明するために、切手の上に押される印のことです。
消印は単なる事務的な印ではありません。
そこには、その郵便物がいつ、どこから発送されたのかという「時間」と「場所」の記録が刻まれています。
これは、歴史的な出来事や社会情勢を研究する上で貴重な資料となることもあります。
例えば、特定の災害時に押された消印や、歴史的なイベントに合わせて作られた記念消印などは、当時の状況を今に伝える貴重な証拠となり得ます。
また、昔の郵便局の名称や、今では存在しない地名が刻まれていることもあり、地域の歴史や文化を垣間見ることができる、まさに「タイムカプセル」のような存在なのです。
切手収集家(切手コレクター)にとって、消印は切手本体と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な意味を持つことがあります。
切手の「状態」を判断する重要な要素になる!
消印が切手の中央に美しく押されている「センター消し」や、特定のイベントで押された「記念消し」などは、切手の価値を高める要因になります。
切手の消印を読み解く上で、まず知っておきたいのが、消印がどのような情報で構成されているか、ということです。
日本の普通日付印の場合、主に「日付」「郵便局名」「時刻」の3つの要素で成り立っています。
要素1:日付(年月日) |
郵便物が差し出された年月日が示されます。 |
要素2:郵便局名(地名) |
郵便物が差し出された郵便局の名称が示されます。 |
要素3:時刻(時間帯) |
郵便物が差し出されたおおよその時刻が示されます。 |
消印は、ただ情報が書かれているだけでなく、その「形」や「色」にも種類があり、それぞれに意味や特徴があります。
最も一般的なのは「丸型(円形)」ですが、他にも様々な形が存在します。
ほとんどの消印は黒色ですが、時には他の色の消印に出会うこともあります。
注意!
消印の色は、インクの種類や経年劣化によっても変化することがあります。
また、古い消印の中には、インクの質が悪く、色が薄くなっているものもあります。
一口に「消印」と言っても、その種類は多岐にわたります。
ここでは、私たちが普段目にする機会の多いものから、切手収集家が特に注目する珍しいものまで、主要な消印の種類をご紹介します。
「普通日付印」は、日常的に郵便局で使用されている、最も一般的な消印です。
和文印は、日本の郵便局名が漢字やひらがなで表記されている消印です。
その中でも、日付と時刻が円の中に収まっているものを「丸一印」と呼びます。
丸一印 |
最も一般的な丸型の消印。 |
欧文印 |
郵便局名がローマ字で表記されている消印。 |
機械印は、郵便物の大量処理のために機械で押される消印です。
手押し印とは異なり、非常に均一で、日付や局名が楕円形や櫛型と組み合わされていることが多いです。
ヒント!
手押し印はインクの濃淡やかすれ具合に個体差がありますが、機械印は比較的均一で鮮明なことが多いです。
記念印は、特定のイベントや場所を記念して一時的に使用される特別な消印です。
デザインが豊富で、切手収集家にとっては非常に人気が高い種類です。
特殊通信日付印は、新しい切手の発行や、郵便に関する特別なイベントを記念して使用される消印です。
通常の日付印とは異なり、デザイン性が高く、イベントの内容に合わせたイラストが描かれていることが多いです。
風景印は、その郵便局がある地域の「名所」「旧跡」「特産品」などをデザインした消印です。
全国各地の郵便局にそれぞれ独自の風景印があり、旅の記念に集める人も多いです。
小型印は、特定の展示会やイベント会場に臨時に開設される郵便局(出張所)などで使用される、比較的小さなサイズの記念印です。
デザインはイベントに特化したものが多く、使用期間も非常に短いため、入手が難しいことがあります。
しかし、使用期間が限られているため、入手し損ねると二度と手に入らないこともあります。
上記以外にも、様々な目的で使われる消印が存在します。
「へぇー、消印ってこんなに種類があるんだ!普段何気なく見てたけど、これからはもっとじっくり見てみようかな。
」
消印の中で最も重要な情報の一つが「日付」です。
いつ郵便物が差し出されたのかを示すこの日付は、切手の歴史を語る上で欠かせません。
しかし、表記方法がいくつかあるため、慣れていないと読み間違えてしまうこともあります。
日本の消印では、主に以下の2つの表記方法があります。
和暦表記 |
「令和〇年〇月〇日」のように、日本の元号が使われます。 |
西暦表記 |
「20XX.XX.XX」のように、西暦が使われます。 |
また、年号が省略されて月日のみが表記されている場合もあります。
日付の数字の並び方は、消印の種類や時代によって若干異なります。
ヒント!
日付の数字が2桁の場合、それが「年」の下2桁なのか、「月」なのか「日」なのかを判別するには、他の情報(郵便局名や消印の様式)と照らし合わせることが重要です。
消印が薄かったり、かすれていたりすると、日付を正確に読み取るのは至難の業です。
しかし、いくつかのコツを試すことで、判読できる可能性が高まります。
様々な角度から光を当てる!
斜めから光を当てると、インクの凹凸が影になって、数字の輪郭が浮かび上がることがあります。
特に、10倍程度のルーペがおすすめです。
明るさやコントラストを調整してみるのも良いでしょう。
インクがにじんだり、切手自体を傷めてしまう可能性があります。
消印に刻まれた郵便局名は、その郵便物がどこから発送されたのかを示す非常に重要な情報です。
旅行の記念に集めたり、特定の地域の郵便局の消印を集めたりする楽しみ方もあります。
多くの消印には、「地名+郵便局」という形で表記されています。
しかし、注意したいのは、同じ地名でも複数の郵便局が存在する場合があることです。
例えば、「新宿」と書かれていても、「新宿郵便局」なのか「新宿西口郵便局」なのか、あるいは「新宿高島屋郵便局」なのかは、消印のデザインや表記の細部から判断する必要があります。
ヒント!
特定の郵便局の消印を探している場合は、その郵便局がどのような消印を使用しているかを事前に調べておくと良いでしょう。
古い消印の中には、現在とは異なる旧字体や略字が使われていることがあります。
旧字体 | 「驛」(駅)、「橫」(横)など、現在では使われなくなった漢字が使われていることがあります。 |
略字 | 「東」(東京)、「京」(京都)など、地名の一部が省略されていることがあります。 |
また、切手収集に関する専門書やウェブサイトには、旧字体や略字の解説が載っている場合もあります。
海外から届いた郵便物の消印には、その国の言語で地名が書かれています。
これを読み解くのは一見難しそうですが、いくつかの手がかりがあります。
国名コードを探す!
消印のどこかに、ISO 3166-1 alpha-2で定められた2文字の国名コード(例:US=アメリカ、GB=イギリス、FR=フランス)が表記されていることがあります。
特に、主要な都市名であれば見つかりやすいでしょう。
国際郵便が届いたら、じっくり見てみよう!」
消印に刻まれている「時刻」は、日付や郵便局名に比べて注目されにくい情報かもしれません。
しかし、この時刻にも、郵便の歴史や効率化の過程が垣間見えることがあります。
時刻が消印に押される主な理由は、郵便物の「受付時間」を記録するためです。
郵便局での受付時間や、集荷された時間帯を明確にすることで、郵便物の追跡や、万が一のトラブル発生時の原因究明に役立てられます。
日本の消印では、時刻は主に「午前」と「午後」の区分と、時間帯(例:12-18)で表記されることが多いです。
午前 | 「AM」や「午前」と表記され、一般的には0時から12時までの時間帯を示します。 |
午後 | 「PM」や「午後」と表記され、一般的には12時から24時までの時間帯を示します。 |
時間帯表示 |
「8-12」(午前8時から12時の間)、「12-18」(午後12時から18時の間)のように、数時間ごとの幅で表示されます。 |
古い消印の中には、より細かい時間(例:13時30分)が表記されているものや、24時間表記が使われているものもあります。
」
せっかく手に入れた切手なのに、消印が薄くて読めない…そんな経験はありませんか?諦めるのはまだ早いです!いくつかの工夫で、判読できる可能性を高めることができます。
消印が薄い場合、光の当て方を変えるだけで、見え方が劇的に変わることがあります。
肉眼では判読が難しい細かな文字も、ルーペや拡大鏡を使うことで、はっきりと見えるようになることがあります。
おすすめは10倍程度のルーペです。
あまり倍率が高すぎると視野が狭くなり、かえって見づらくなることがあります。
消印が薄いからといって、無理にこすったり、鉛筆などでなぞったりするのは絶対にやめましょう。
」
切手収集の世界では、切手本体のデザインや発行枚数だけでなく、「消印」も切手の価値を大きく左右する重要な要素となります。
前述したように、消印には様々な種類があります。
その中でも、特に希少価値が高いとされる消印が付いた切手は、高値で取引されることがあります。
消印の種類だけでなく、その「状態」も切手の価値に大きく影響します。
センター消し |
消印が切手のデザインの中央に美しく押されているもの。 |
鮮明度 |
日付や郵便局名がはっきりと読み取れる消印は、価値が高まります。 |
切手への影響 | 消印が切手のデザインを大きく覆い隠していたり、切手を破いていたりすると、価値は下がります。 |
一般的に、古い切手は未使用の方が高価ですが、特定の記念切手やエラー切手などでは、消印付きの方が価値が高い場合もあります。
もし、手元に珍しいかもしれない切手や消印がある場合は、切手専門の鑑定士や切手商に相談することをおすすめします。
ここでは、切手の消印についてよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
消印がない切手は価値がありますか?
消印付きの切手は、そのままの状態でコレクションするのが一般的です。
特に、風景印については、日本郵便のウェブサイトに全国の風景印の画像が掲載されています。
この記事では、「切手 消印 見方」をテーマに、消印の基本的な知識から、その種類、そして具体的な読み解き方まで、詳しく解説してきました。
切手の消印は、単なる「使用済み」の印ではありません。
そこには、郵便が送られた「いつ」「どこで」「どのように」という情報が詰まっており、時には歴史を語り、時には地域の文化を伝える貴重な存在です。
きっと、これまで気づかなかった新しい発見があるはずです。
そして、消印の奥深さに触れることで、切手収集の楽しみがさらに広がるかもしれませんね。
さあ、あなたも今日から消印の達人を目指してみませんか?