エドマン、2026年WBCについて「まだ考えていない」:その背景と今後の展望

2025年4月14日、ロサンゼルス・ドジャースのトミー・エドマン外野手が、2026年3月に開催予定の第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)について、「まだ考えていない」と語った。
この発言は、2023年大会での韓国代表としての苦い経験や、現在のメジャーリーグでの活躍、そして彼自身のキャリアの岐路を反映している。
本記事では、エドマンのコメントの背景を掘り下げ、彼がWBCに対して慎重な姿勢を示した理由と、今後の可能性について多角的に考察する。

 

 

2023年WBC:韓国代表としての挑戦と批判

 

トミー・エドマンは、韓国系アメリカ人として、2023年のWBCに韓国代表として出場した。
母親が韓国出身である彼にとって、この大会は自身のルーツと向き合う貴重な機会だった。
しかし、結果は期待を大きく下回るものだった。
韓国代表は日本と同じB組で戦ったが、3大会連続の1次ラウンド敗退という厳しい結果に終わり、エドマン自身も3試合で11打数2安打と振るわなかった。
特に日本戦では「1番・二塁」として出場したが、4打数無安打に加え、守備でのエラーも記録。
韓国国内のメディアやファンから厳しい批判を浴びることとなった。
この経験が、エドマンのWBCに対する現在の慎重な姿勢に影響を与えている可能性は高い。

 

韓国では、外国籍やハーフの選手に対する期待と評価が特に厳しい傾向がある。
エドマンはMLBでの実績ある選手として大きな期待を背負っていたが、短期間の大会でその力を発揮できなかったことで、「韓国代表としての適格性」を疑問視する声も上がった。
このような背景が、彼が次回大会について「まだ考えていない」と述べる一因となったと考えられる。

 

メジャーリーグでの飛躍:ドジャースでの新たな役割

 

2024年7月末、エドマンはセントルイス・カージナルスからドジャースへトレードで移籍。
2025年シーズン序盤の時点で、17試合に出場し、打率.250、6本塁打、14打点という好成績を残している。
特に、4月11日のカブス戦では、山本由伸投手を援護する決勝3ランを放ち、メジャートップタイの6号本塁打を記録。
ユーティリティー選手としての守備力に加え、意外性のある長打力が注目を集めている。

 

ドジャースでの活躍は、エドマンのキャリアにとって大きな転機だ。
カージナルス時代は主に守備と足を武器にした選手として知られていたが、ドジャースでは打撃面でも存在感を示している。
この好調さが、WBCへの参加を考える上で彼の優先順位に影響を与えている可能性がある。
現在、彼はチームの勝利に貢献すること、そして自身の契約やキャリアの安定を最優先に考えている段階かもしれない。
2026年のWBCは魅力的だが、シーズン前の準備やリスクを考慮すると、即座にコミットするには時期尚早と感じているのだろう。

 

韓国代表かアメリカ代表か:選択のジレンマ

 

エドマンのWBCへの参加を複雑にするもう一つの要因は、代表チームの選択だ。
韓国系アメリカ人である彼は、韓国代表としての出場資格を持つ一方、アメリカ生まれの選手としてアメリカ代表を選ぶ可能性も指摘されている。
2023年大会では韓国を選んだが、結果的に厳しい批判を受けた経験から、別の選択肢を模索する可能性も考えられる。
ファンの間では、「アメリカ代表の可能性もあるが、セカンドのポジション争いでは選ばれないかもしれない」といった声も聞かれる。

 

2026年大会では、ヤンキースのアーロン・ジャッジがアメリカ代表の主将に就任することが決定し、ドジャースのムーキー・ベッツも「打診があれば出たい」と意欲を示している。
エドマンがアメリカ代表を選ぶ場合、内外野のユーティリティー選手として魅力的な存在だが、スター選手揃いのロースターの中で出場機会を得るのは簡単ではない。
一方、韓国代表では中心選手として期待される可能性が高いが、過去の批判の再燃を避けたいという心理も働くかもしれない。
この二択のジレンマが、彼の「まだ考えていない」という発言の背景にあると考えられる。

 

WBCの特殊性と選手の負担

 

WBCは、選手にとって名誉な舞台である一方、身体的・精神的な負担も大きい。
3月に開催されるため、メジャーリーガーはシーズン前の調整期間を割いて参加する必要がある。
エドマンの場合、2023年大会での不振に加え、韓国代表としての準備やメディア対応のプレッシャーを経験している。
ドジャースでの好調を維持し、2025年シーズンを成功させることが彼の最優先事項であれば、WBCへの参加はリスクを伴う選択となる可能性がある。

 

さらに、2026年大会のC組(日本、韓国、オーストラリア、チェコ、台湾)は、アジアの強豪が揃う「死のグループ」とも称される。
特に日本戦や台湾戦は、韓国代表にとって精神的な重圧がかかる試合となるだろう。
エドマンが韓国代表を選ぶ場合、2023年以上のパフォーマンスが求められることは間違いなく、その準備にかかるコストを彼がどう評価するかは大きなポイントだ。

 

韓国での評価の変化とエドマンの未来

 

2023年のWBC後、エドマンに対する韓国国内の評価は一時厳しいものだったが、最近では彼のメジャーでの活躍が再評価される動きも見られる。
ドジャースでの本塁打量産や、山本由伸との好連携は、韓国でもポジティブに受け止められている。
たとえば、カブス戦での活躍後、エドマンは山本の投球を「信じられないような投球だった」と称賛し、チームメイトとしての信頼関係を示した。
このような姿勢は、韓国ファンの心を再び掴むきっかけになり得る。

 

もしエドマンが2026年WBCで韓国代表として再挑戦するなら、過去の批判を跳ね返す絶好の機会となるだろう。
逆に、アメリカ代表や不出場を選択した場合、彼のキャリアはよりメジャーリーグ中心のものになる可能性が高い。
いずれにせよ、彼の決断は自身のルーツ、キャリアの方向性、そしてファンとの関係性を反映する重要なものになるだろう。

 

結論:エドマンの選択とファンの期待

 

トミー・エドマンの「まだ考えていない」という発言は、2023年WBCでの苦い経験、ドジャースでの新たな挑戦、そして代表チーム選択の複雑さが絡み合った結果だ。
現時点で彼は、目の前のシーズンに全力を注ぐことを優先しており、WBCへのコミットメントは後回しにしているように見える。
しかし、2026年が近づくにつれ、彼の決断は韓国やアメリカの野球ファンにとって大きな話題となるだろう。
過去の批判を乗り越え、自身のルーツと向き合いながら、エドマンがどのような選択をするのか。
その答えは、彼のキャリアだけでなく、WBCの舞台にも新たな物語をもたらすに違いない。